2019年9月12日

社会システムの三類型に関するルーマン

これはいったいどこに書いたのだろう? 長岡克行さんの研究書を読んだときのメモ。参考までに転記しておく。

投稿者 野村一夫 日時 2008年7月10日 (木) 10:21 01社会学の領域 | 個別ページ
2008年6月22日 (日)
社会システムの三類型に関するルーマン

 ルーマンには独特の理論的前提がある。それを無視するわけではないけれども、上澄みだけを参照することも許されるだろう。
 長岡克行(2006)によると、ルーマンにとって社会システムはコミュニケーション・システムである。コミュニケーションが唯一の要素である。そのコミュニケーションがどのように条件づけられているか(こういう表現はとらないけれども単純化して)によって三つの類型に区別されるとする。
 第一の社会システムは相互行為(相互作用)である。その前提は「居合わせていること」である。
 第二の社会システムは組織である。ここでは「構成員である」ことが前提である。組織はその構成員資格に役割や権限や指示服従義務等を結びつけている。これらによって組織はコミュニケーションの偶発性(ダブル・コンティンジェンシー)を大幅に解決する。
 第三の社会システムは社会(ゲゼルシャフト)である。相互行為も組織も社会に含まれる。包括的な社会システムである。「社会はコミュニケーションという操作によって生産され再生産されるオートポイエティック・システムである。」(長岡克行 2006:443)これこそ社会学の対象なのである。
 ルーマンのこの三類型は、かれが社会システムをコミュニケーション・システムと考えることからも、コミュニケーションには三局面があるということを指示していると理解してもかまわないだろう。

投稿者 野村一夫 日時 2008年6月22日 (日) 12:41 01社会学の領域 | 個別ページ
理論の二つのタイプに関するルーマン

 長岡克行(2006:94-95)によると、ルーマンは『社会システム』の準備過程の論文で、ふたつのタイプの理論を区別しているという。
 第一のタイプがベーコン的伝統に由来するもので、ある秩序を所与として前提し、その秩序に欠如しているものや欠陥を問題にするものである。この場合、社会学者は医者と同じように、社会秩序の安定性や社会問題に取り組む。不健全と考える諸問題から道徳的な推進力を引きだす。別の表現を使うと「治療的関心」と言えそうである。
 それに対して、ルーマンが主として取り組む第二のタイプは、ホッブス的伝統に立つもので、通常なもの・正常と考えられているものが「ありそうにないこと」と考える。この理論は「いかにして可能か」を問う。
 なるほど、社会学には二つの理論系統が生きている。実態としては、それらの混交と見ていいだろう。ただし、アメリカの社会学テキストには、前者の傾向が顕著である。そこではクリティカル・シンキングがしばしば強調されるが、もっぱら第一のタイプの問いである。ほんとうは第二のタイプの問いであってもかまわないのであるが、「社会をなんとかしたい」という実践的関心を社会学初心者に呼び起こすのが先決だと考えてのことだろう。

投稿者 野村一夫 日時 2008年6月22日 (日) 11:38 01社会学の領域 | 個別ページ
2008年6月19日 (木)
領域社会学の根拠

 領域社会学の存立根拠は「社会分化」正確には「社会の機能的分化」である。とすれば、ルーマンのシステム論を参照・準拠して体系づける必要がありそうだ。
 しかし、ここで、社会学の領域をふたつに分けてみよう。コア領域とフロント領域である。コア領域は社会分化の進んだ領域であると考えられる。それゆえ、社会学者によってぶれがない。共通了解として、それらが社会学の領域と認められている。家族・宗教・経済・政治・教育・医療といったテーマがそれである。
 ところが、最前線であるフロント領域においては、そうした合意が必ずしも成立していない。未開拓領域あるいは不可視領域に社会学者が切り込んでいく特殊領域では、「あれもある、これもある」といった形での導入で済んでしまっている。社会学理論とくに社会分化論との関連づけが不十分なのである。
 ここで疑問が生じる。そもそも領域社会学の理論的根拠は「社会の機能的分化」だけなのか。他のロジックがあるのではないか。他のロジックを見いだせれば、機能主義者とは一線を画すことができる。じつは、これまで社会学テキストの著者たちは機能主義からの離脱は果たしていないのだ。他の理論的立場を併記することですませているにすぎない。領域設定においては機能主義の掌を出ていなかったと言うべきである。
 それに対して私は「社会問題構築」の観点から領域社会学(とくにフロント領域)を根拠づけられると考えている。「社会の自省作用」の一環として領域社会学が立ち上がり作動しているというロジックである。この点を考えるために、社会問題のハンドブックを見てみよう。
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読書ノート始めます

現在進行中の研究計画で使用する予定の文献レビューを始めます。読書ノートのようなものになる予定です。できることなら週刊誌に連載するように、ひとまとまりの文献について1週間でメモしていきたい。積ん読している文献を読みながら研究計画における役割を確定していく予定です。レーニンの哲学ノー...